アトピーがつらいのは、肌のことだけではありませんでした。
かゆみや、乾燥や、荒れた肌。
それももちろんつらいのですが、私にとっては、心も同じくらいしんどかったように思います。
仕事の緊張や責任が重なると、肌の調子まで悪くなっていくように感じる。
そして、肌が悪化すると、そのことがまた大きなストレスになる。
そんなことを繰り返していました。
顔にアトピーが出ていた頃は、人に見られたくなくて、いつも下を向いていました。
朝の身支度にも、いつもより時間がかかる。
普通の生活が、普通に送れない。
そんな毎日の中で、気持ちはいつもギリギリでした。
けれど、当時の私を支えてくれたのは、特別な方法ではありませんでした。
アトピーのことを忘れて、何かに没頭する時間。
そして、肌の状態を気にせず、安心して会える人。
そんな何気ない時間が、私には必要でした。
この記事では、アトピーがつらかった頃に私が感じていたことと、心を休ませてくれた時間について書いています。
同じように、肌のことだけではないつらさを抱えている方に、何かひとつでも届いたら嬉しいです。
気持ちが、いつもギリギリだった頃
当時の私は、アパレル店で店長をしていました。
仕事自体は好きでしたし、やりがいもありました。一緒に働くスタッフのことも、大切に思っていました。
けれど、顔にアトピーが出ていた時期は、人前に立つ仕事が本当につらかったのです。
真っ赤な顔を、人に見られたくない。
それでも、店に立たなければいけない。
店長という立場でしたから、売上のことも、スタッフのことも考えなければなりません。「アトピーがつらい」なんて、言っていられませんでした。
もっと思いっきり働きたいのに、身体が思うように動かない。
着たい服も、着られない。
朝は、起きてすぐ鏡で顔の赤みやカサつきを確認するところから始まります。
たいていガサガサしていたので、少しでも化粧がしやすくなるように、朝シャワーでカサつきを擦り落としていました。
今考えると、それこそ悪循環だったのですが、あの頃はそうするしかないと思っていました。
そうやって準備をしても、化粧はうまくのりません。少しでもアトピーを隠したいのに、肌の調子が悪い日は、本当に行きたくなくて。
身体もかゆく、かく手を止められないまま、それだけで時間が過ぎていくこともありました。
普通の生活が、普通に送れない。
そのことが、じわじわと心を削っていきました。
今振り返っても、あの頃は一日一日を生きるのに精一杯だったと思います。
脱ステロイドやカポジ水痘様発疹、不妊を経験した私のこれまでのアトピーの経過は、こちらの記事にまとめています。
アトピーそのものが、ストレスだった
仕事で緊張や責任を強く感じていた時期は、肌の調子も悪くなりやすいと感じていました。
けれど、つらかったのはそれだけではありません。
アトピーそのものが、私にとって大きなストレスだったのです。
ストレスがかかると、肌が荒れる。
肌が荒れると、そのことがまた新しいストレスになる。
出口の見えない、ぐるぐるとした輪の中にいるようでした。
アトピーは、皮膚に出ます。
特に顔に出たアトピーは、隠しようがありませんでした。
人と話すとき、相手の視線がどこを見ているのかが気になってしまう。何も言われていないのに、自分で勝手に落ち込んでしまう。
見た目のストレスは、本当に大きいものでした。
こうしたつらさは、周りからはなかなか理解されにくいのだと思います。
でも、それは仕方のないことなのかもしれません。どんな病気にも、なった人にしかわからないつらさが、きっとあります。
肌に出ているものは見えても、その奥にあるつらさまでは、なかなか伝わりません。
誰かが悪いわけではないのだと思います。
ただ、ひとつだけ言えるとしたら——
アトピーは、「見た目だけの問題」「かゆいだけ」「皮膚のことだから、身体は元気」と思われがちです。
でも本当は、もっと複雑で、もっとしんどいものだと思います。
朝起きるたびに鏡を見るのが怖いこと。人の目が気になって下を向いてしまうこと。気が狂うほどのかゆみ。
肌のつらさに、心のつらさが重なっていく。
気持ちが、いつもギリギリだったのは、そのせいだったのだと思います。
アトピー以外のことで、頭がいっぱいになる時間
もともと私は、ものづくりが好きでした。
中学生の頃は、美術の授業が好きでした。絵を描いたり、作品を作ったり。集中していると、あっという間に時間が過ぎていく。あの没頭する感覚が好きだったのだと思います。
大学では服づくりを学んでいたので、大人になってからは、ミシンと料理が私のものづくりの時間になりました。
姪っ子のレッスンバッグを縫ったり、ルーを使わず、スパイスからカレーを作ることにはまったりしました。
夢中になっているあいだは、アトピー以外のことで頭がいっぱいでした。
かゆみのことも、肌のことも、明日の仕事のことも、そのあいだだけは考えずにいられました。
ものづくり以外にも、アトピーを忘れられる時間がありました。
当時はK-POPにもはまっていました。動画をたくさん見ましたし、ライブにも足を運びました。好きなものを追いかけている時間も、私にとっては大切な時間でした。
何に没頭できるかは、人それぞれだと思います。
推し活でも、ゲームでも、散歩でも。アトピー以外のことに気持ちを向けられる時間が、ひとつでもあるといいのかもしれません。
もちろん、それでアトピーがなくなるわけではありません。
それでも、「忘れられる時間」があるだけで、私はずいぶん救われていたのだと思います。
顔にアトピーが出ていても、会えた幼馴染
アトピーが顔に出ていた時期は、人に会うのが本当に怖くなりました。
約束をキャンセルしたことも、何度もありました。
約束した日に、自分の肌がどんな状態になっているかわからなかったからです。
そのうち、約束をすること自体が怖くなり、自分から誰かを誘うことは、ほとんどしなくなっていきました。
そんな中でも、彼女にだけは会えました。
幼稚園の頃からの幼馴染で、もう家族のように大切に思っている存在です。
なぜ彼女にだけは会えたのか。
今考えると、絶対に自分の味方でいてくれる人だとわかっていたからだと思います。
肌が荒れていても、そのままの私を受け止めてくれる。だから、身構えなくてよかったのです。
一緒にランチや夕ごはんを食べたり、散歩をしたり、カラオケに行ったり。
話すことも、いろいろでした。
昔の話や、どうでもいいくだらない話。恋愛の話や、仕事の話。アトピーのことも、そのまま話せました。
子どもの頃は、箸が転がっただけでもおかしくて、笑っていました。
大人になるにつれて、そんなふうに無邪気に笑うことは、いつの間にか少なくなっていきました。
けれど、彼女といるときだけは、あの頃に近い感覚になれるのです。
くだらない話もできて、真面目な話もできる。
何より、自分がリラックスしていられる。
あの居心地のよさに、当時の私は何度も救われました。
「髪、きれいだね」その言葉に救われた
彼女には、ひとつすごいところがあります。
人のいいところを見つけるのが、とても上手な人なのです。
アトピーで顔が真っ赤になっていたときも、彼女はこんなふうに言ってくれました。
「髪、きれいだね」
「今日の服、かわいいね」
きっと彼女は、気を遣って肌の話題を避けていたわけではないと思います。
ただ純粋に、いいなと思ったところが、そこだっただけなのだと思います。
人のいいところに気づいても、それを言葉にして伝えるのは、意外と難しいものです。心の中で思っていても、口に出すのは照れくさかったりしますよね。
でも彼女は、それが自然にできる人でした。
顔にアトピーが出ていた頃の私は、人に顔を見られたくなくて、どうしても下を向きがちでした。
鏡を見るのも嫌になって、少しずつ自分に自信が持てなくなっていく。
そんなときに、「髪、きれいだね」と言ってもらえる。
ほんのひと言なのに、私はどれだけ救われたかわかりません。
言葉にして伝えてもらえるって、やっぱり嬉しいものです。
彼女の言葉に、そして彼女という存在に、私は何度も助けられました。
そして、彼女から学んだこともあります。
人のいいところを見つけたら、ちゃんと言葉にして伝えること。
どれだけそう思っていても、言葉にしなければ、相手には届かないこともあります。
あの頃の私がそうだったように、そのひと言に救われる人が、きっといるのだと思います。
心がゆるむと、身体もゆるむように感じた
彼女と会った次の日は、不思議と肌の調子がいいと感じることが、何度もありました。
特別なことをしたわけではありません。おいしいものを食べて、たくさん話して、笑っただけです。
それでも翌朝、鏡を見ると「今日は肌つやがいいな」と思う。
心と身体はつながっている。そのこと自体は、以前から知っていました。
けれど、頭で知っていることと、自分の身体で感じることは、まったく別のことでした。
思い返せば、逆のこともありました。
仕事で気を張り続けているときや、心配ごとを抱えているときは、肌の調子もあまり良くなかったように思います。
自分では気づいていなくても、身体のほうが先に反応しているのかもしれません。
心がこわばっているときは、身体もこわばっている。
心がゆるんでいるときは、身体もゆるんでいる。
そして、良くなっていくときも同じでした。
心が軽くなると、身体も少しずつ楽になっていく。身体が楽になると、心にも余裕が出てくる。
心が先か、身体が先か。
ただ、どちらから始まっても、心と身体はやっぱりつながっているのだと感じています。
そんなふうに思うようになってから、私は肌のケアと同じくらい、心の状態も気にかけるようになりました。
食事や運動、入浴、心の休ませ方など、暮らし全体を見直した経験はこちらの記事にまとめています。
まとめ|心が健康でいられることが、いちばん大事
アトピーと向き合ってきて、私が今いちばん大切だと思っているのは、心が健康でいられることです。
心が元気でないと、目の前にあるもののよさを感じる余裕もなくなってしまいます。
同じ景色を見ても、同じものを食べても、心が疲れていると、そのよさを感じられなくなってしまう。
そして、心まで深く傷ついてしまったら、そこから立ち直るまでには、長い時間がかかることもあると思うのです。
だから私は、肌のことと同じくらい、心のことも大事にしたいと思っています。
以前、ハーゲンダッツのCMで、こんな言葉を耳にしました。
「私は知っている。私をごきげんにする方法を。」
この言葉が、私はとても好きです。
自分が何をしていると、心がほっとするのか。
誰と過ごしていると、自然な自分でいられるのか。
それを知っておくことは、生きていくうえで、とても心強いことだと思います。
私にとってそれは、ものづくりの時間であり、好きなものを追いかける時間であり——そして、幼馴染と過ごす時間でした。
彼女といるとき、私は「アトピーの私」ではなく、ただの私でいられました。
彼女とは今も仲良しで、1〜2か月に1回はランチをしたり、一緒に買い物に行ったりしています。
あの頃も、今も。私にとって大切な時間です。
もし今、アトピーで人に会うのが怖くなっている方がいたら。
たくさんの人と会う必要はないと思います。
一人でも、安心してそのままの自分でいられる人がいるのなら、その人との時間を。
誰かに会うのがつらいときは、一人で好きなことに夢中になる時間を。
自分の心が少しゆるむ時間を、どうか大切にしてくださいね。
※この記事は、私個人の体験と考えをまとめたものです。





